テニス部の思い出とつかさ

つかさ

僕は柄にもなく中学の頃ソフトテニス部に所属していたのだが、一昨日バレーのつかさについて妄想をしているうちに、引退を控えた最後の大会での出来事をふと思い出した。
そもそも小さい頃から運動が嫌いだった僕がなぜテニス部に入ったかと言うと、それは単に知り合いがたくさん入部したからというだけの理由で、別段上手くなりたいと思うでもなかった自分は、運動神経ゼロのままろくすっぽ練習もしない、まあろくな部員じゃなかった。だもんだから、無論いつまで経っても下手なままで、大会に出たって1回戦落ちが当たり前だったが、僕は反省するでもなく、ただへらへらと過ごしてきた。
ところがだ。中3の5月に行われた市の総体、つまり最後の大会に出場した時のこと。1回戦であっさり1ゲーム取られたところから、ふいに身体ががくがくと震え始めて、何度も涙が出そうになって、3ゲーム取られて試合終了した時にはとうとう泣いてしまったんだよね。でもこれは、なにも試合に負けたから泣いたわけじゃない。こうして迎えた最後の大会も、こんなにあっさり終えてしまうほど、今までずっと怠けてきた自分が情けなかったから泣いたんですよ。もちろんこんなこと誰にも話さなかったけど、たとえ話したとしても「は?」と思われただろうよね。いやお前今更何言ってんのと。傍から見ている方はそう返して当たり前だったと思う。僕も都合のいい感傷だったと思う。でも、あの瞬間、僕のあの思いは、僕の胸のうちに確かに存在していたのよな。ただ、喉元過ぎれば熱さを忘れる。その後の僕の怠惰な生活を考えると、あの心はとっくに失われてしまった。
でも、喉を通ってる間は確かに熱いんだよね。だから、あの時つかさが「私いっつもお姉ちゃんを頼ってばっかり」とつぶやいて、変わらなくちゃと決意したというのは、ただの妄想だと言うつもりはなくて、僕は彼女は本気でそう考えていたんだと思ってる。実際のところその決意が長く持続するかはわからない。だが少なくとも、あのバレーコートの上にいる間は、彼女はきっとそう誓っていたはずなんだ。僕はテニスコートの上でただ涙を流しただけだったけど、つかさは涙を拭い自分の全力を出すべく立ち上がったんだ。だからこそ僕は、このバレーボールの試合の中で彼女たちが浮かべた他の様々な表情のどれよりも、弱気な顔から一転して立ち上がったつかさが見せる決意に満ちた表情に目を奪われたのだし、彼女のことをいっそう好きになったんだよね。