けいおん!最終話雑感

6話の学園祭ライブから引っかかりを感じ始め、11話で楽しむことを放棄しかけたけいおん!だったが、思いがけず最終回で一定の理解を得ることができた。12話も初めのうちは梓の唯先輩がいなくちゃ意味がありません宣言とか憂の姉溺愛っぷりにうんざりしていて、ギターを背負って学校へ駆ける間の唯のうわべだけのモノローグも冷めた顔して聞いてたんだけど、ステージに上がって、メンバー全員にやさしい顔で迎えられて、彼女の瞳に涙が溢れたところでとうとう来たと。思い描いていたような展開がとうとうやって来やがったと。
とにかく6話のライブシーンは不満だった。自分が学園祭という舞台でギャラリーを前に演奏するというシチュエーションだけにわくわくしている様子の彼女たちが嫌いだった。演奏が終わった直後に客席へ真っ直ぐ向けられた彼女たちのあの恍惚とした表情が嫌いだった。演奏をやり遂げた自分を誇らしく思うよりも先に、一緒に音楽を作り上げた仲間たちに目を向けて欲しかった。自分と同じ志を抱いた仲間と一緒にステージへ上がれることの喜びと、いつか訪れる終わりへの不安を感じて欲しかった。
だから12話の2年目の学園祭ライブで、演奏を終えた瞬間に自ずと互いを見つめた彼女たちが愛しかった。あらゆる自分を受け入れてくれた仲間たちが、みんなで過ごしたあの時が、どれだけかけがえのないものだったか、いまさらのように気付いて、涙を流した唯がたまらなく愛しかった。
結局けいおん!ってのは平凡な青春をひどく客観的に描いてきたアニメだったんだなーとか思った。そこらへんにいる大人の多くが高校生や大学生の頃に経験したであろう、過ぎてから振り返ってみれば当時の自分が世界で一番幸せだったんじゃないかと思えるくらい毎日が輝いていたあの時代を、二度と取り戻すことのできない幸福を当たり前のものとして享受したあの時代を、今まさに生きる唯たちを、彼女たちの視線で描いたアニメだったんだなって。てっきりそのまま幕を閉じるのかと思っていたけど、最後の最後で閉幕は決定的に否定された。気持ちの芽生えた彼女たちの物語は、きっとここからが正念場なのだろう。