竹芝ふ頭

夜に会社の若手だけの飲み会があったのだがいざ足を運んでみるとこれが立食形式で今までの経験に即して考えると孤立しそうだったから、ある程度腹を満たしたところで会場を逃げ出してしまった。最初はそこら辺の花壇で携帯でもいじって時間潰そうかと思ってたんだけど、寂しいし実りがないし風が寒かったので夜の街のお散歩という名目でとぼとぼ歩いていると竹芝ふ頭に行き着いた。

レインボーブリッジとお台場が一望できる景色の綺麗な場所だった。すぐ脇にはインターコンチネンタル東京ベイなんていう立派なホテルが建っており、展望レストランで食事をしている人はガラス越しに何人も見えたけれど、外のデッキはひどくがらんとしていて、整然と並べられたベンチに座るカップルと、手すりにもたれて海を見つめる男性と、数えても十人もいなかった。静かに夜景を望める穴場かもしれない。
デッキの下は竹芝客船ターミナルという船乗り場の待合室になっていた。時刻表を仰ぎ見ると大島とか八丈島とか、伊豆諸島の島々の名が並んでいる。ジェット船に乗れば本州から二、三時間で伊豆諸島に着くという事実を5月に知って以来いつか行きたいなと考えていたのだけど、その船はここから出るんだ、とか。夜遅く出航して翌朝各島へ到着する大型船もあって、いま待合室を賑わす彼らはその乗客らしかった。まだ時間に余裕があるだろうに、待合客に紛れて硬いパイプのベンチに腰を下ろしていると、次から次へと大きな荷物を抱えた人々が入ってくる。小さい子供を連れた家族に、合宿でもするのか学生の集団、サーファー、釣り人。あけぼのの停車した上野駅13番線ホームで感じたような、いままさに始まろうとする小旅行に沸き立つ人々の熱気に満ちた空間は、悪くなかった。
うとうと居眠りをしていると同期から電話がかかってきた。飲み会は終わったし店も閉まるからあなたの鞄は二次会に持っていくよといった話をされたので、ご迷惑おかけしますとだけ伝えて電話を切り、教えられた居酒屋へ向かった。鞄だけ受け取って帰るつもりだったが、席を一つ空けておいてくれたので結局お開きになるまでお邪魔してしまった。みなさんやさしいんだね。